海の恵みを余すことなく活かす 〜弘化台から生まれたOcean Leatherの挑戦〜
2026.05.18
高知市南部に位置する弘化台は、漁港と市場が隣接する水産の街として発展してきた地域です。
黒潮の恩恵を受けた豊かな海に面し、早朝には多くの漁船が接岸し、水揚げされたばかりの魚が市場に並びます。

隣接する高知市中央卸売市場には活気があふれ、水産加工や冷凍流通の拠点として、長年にわたり地域の経済を支えてきました。
こうした環境の中で、魚の新たな価値に目を向けた取り組みが生まれています。
それが、魚の皮や鱗を素材として活用する「Ocean Leather」です。

刺身などに加工される過程で、魚体の60〜70%が廃棄されると言われる中、これまで見過ごされてきた“皮”に着目し、新たな素材として再生する挑戦です。
ブランドを立ち上げた高橋裕海氏は、高知出身で16歳から水産加工の現場に関わってきました。日々魚を扱う中で、廃棄される部分の多さに疑問を抱き、「この資源を活かすことはできないか」と考えるようになったといいます。
転機となったのは、魚の剥製を目にした経験でした。そこにあった魚皮の質感や表情に可能性を見出し、独自に皮革のなめし技術を学びながら試行錯誤を重ねていきました。

その取り組みは、2021年にOcean Leatherとして形になります。
魚皮を革へと加工するこの素材は、単なるアイデアにとどまらず、環境や地域産業への配慮を含んだものづくりとして展開されています。
廃棄される魚皮を活用することで廃棄削減につなげるとともに、漁業関係者に新たな収益の可能性を生み出す取り組みでもあります。
また、製造工程にも特徴があります。

一般的な革製造で多く用いられるクロムなめしではなく、植物タンニンを使用した方法を採用しています。さらに、そのタンニンも持続可能な管理がされた森林資源から調達されており、環境負荷の低減に配慮されています。
素材の調達から加工まで、一貫して「無駄を生まない」姿勢が貫かれています。

完成した製品には、魚皮特有の繊細な質感と鱗の表情がそのまま活かされています。
ひとつとして同じものはなく、自然由来の素材ならではの個性が感じられます。それは単なる革製品ではなく、海の記憶を手元に残すプロダクトとも言えます。
Ocean Leatherが目指しているのは、「海・魚・人」をつなぐ循環の創出です。
魚を余すことなく使い切るという考え方を通じて、これまで価値として認識されてこなかった部分に光を当て、新たな可能性を提示しています。
地域の資源を最大限に活かしながら、持続可能なものづくりへとつなげていく姿勢です。
弘化台という水産の街で培われてきた背景と、現場から生まれた課題意識。
その両方が重なり合うことで、この取り組みは形になっています。目に見える製品の背後には、海の恵みを無駄にしないという強い意思と、地域とともに歩む視点が息づいています。
手に取る一つひとつの製品には、海から生まれた素材の新たな価値が込められています。

Ocean Leatherは、素材そのものだけでなく、その背景にあるストーリーごと届けるブランドとして、これからの革のあり方を示しています。